偽書を推薦する合衆国ホロコースト記念館
――合衆国ホロコースト記念館の返信メールから――
[厚顔無恥]
ホロコースト文献の「古典」に頼ることについてのビルとボブのコメントには、多くの点で共感しました。ヴィーゼルの『夜』は、私が読んだものの中でもっとも印象的なホロコースト生存者の回想録であり、各種の読者にうけいれらる作品であろうと思います。しかし、ホロコースト文献は、多くの生存者が自分たちの経験を記録しようとしたり、ホロコースト時代の日記や文書資料が公表されたりした結果、非常に数多くなり、中身も豊かになってきました。さらに、ユダヤ人以外のホロコースト犠牲者に対する関心も、以前よりも大きくなっていますし、このことは、彼らの物語の出版物が増えていることに反映しています。
『アンネの日記』は戦争直後に出版されており、何ヶ国語にも翻訳されていますので、「古典」であることに間違いありません。しかし、(アムステルダムで身をかくしてして少女の物語であり、ホロコーストの時代のヨーロッパ・ユダヤ人の経験総体を反映していないので)ホロコーストについて教育する最良の文献ではないという意見もあります。また、『アンネの日記』は初版以来たびたび改訂されてきました。性的な話し、母親との青春時代の衝突についての箇所を公表するのは適切ではないと父親が考えたので、その部分は初版から削除されています。日記の最新版には、それまで削除されていた箇所が復元されています。ですから、どちらの版が「古典」なのでしょうか?
…
最後に、ボブとビルのお二人には、最近出版された、ヴィルコミルスキーの『断片』をお読みになることをすすめます。この本は「成人向き」で、生徒の教材として使用するには難点があると思いますが、これまで読んだ中でもっとも印象的な生存者の回想録です。その文体は素晴らしく、ジョナサン・コゾルは『ネーション』誌への書評の中で、こう記しています。
「この魅力的で簡素な文体の作品は、非常に感動的で、道徳的にも重要であり、文学的な修辞にも捉われていないので、自分に賞を提供する資格があるかどうかを疑ってしまうほどである。
『断片』は、」
Finally, I encourage both Bob
and Bill to read a very recent publication -- Binjamin
Wilkomirski's Fragments. Although I consider this an "adult
level" book and have difficulty imagining using it with most students, it
is probably the most powerful survivor memoir that I have ever read. It is beautifully written, and as
Jonathan Kozol writes in his review for _The Nation_:
"This stunning and austerely
written work is so profoundly moving, so morally important and so free from
literary artifice of any kind at all that I wondered if I even had the right to
try to offer praise.
"Fragments
will very likely be compared to Elie Wiesel's Night, an equally understated
memoir recollected in a similarly pure and simple style. But Wiesel was 15
years old when he arrived at Auschwitz, so he understood, at least to some
degree, the genocidal context of his own experience. We read Fragments
in a different way, participating in the chaos of a child's desperate
incomprehension, his longing to find reference points that might explain the
inexplicable. Night remains, for me, the classic work, the quintessential and
enduring testament of Holocaust survival. Although universal in its
implications, it nevertheless belongs to a narrowly specific time in history. Fragments,
on the other hand, is likely to be read as much by child psychologists as it
will be by historians. It poses questions asked by those who work with
spiritually tormented children everywhere: How is a child's faith in human
decency destroyed? Once destroyed, how can it be rebuilt? Or can it never be?
What strategies do children learn in order to resist obliteration in the face
of adult-generated evil? Is it right to ask them later to renounce these
learnings? Is it too dangerous for them to acquiesce? But, if they can't
renounce the skills required in a time of darkness, can they ever truly live
within the light of normal day? What does "normal" mean in a world
that will so easily sequester and destroy those it has first dehumanized? To
ask children to believe in goodness, and even more important, in the
reliability of goodness, is to assume or to pretend that we believe in it as
well."
For the complete text of Kozol's
review see URL: http://sparc20.medctr.luc.edu/~ael/heros/kozol/children-camps-bk-review.html
[see also:
http://www.english.upenn.edu/~afilreis/Holocaust/children-camps-bk-review.html
-- NB]
[...]
David Klevan Museum Educator,
High School Programs United States Holocaust Memorial Museum dklevan@ushmm.org
Send all questions and
シャローム
現存のホロコースト生存者の数について、過去、何回もお尋ねがありました。
イスラエルの首相官邸が他の研究機関と協力して設置した委員会が、誰をホロコーストの生存者と定義し、今日、どのくらいの生存者が世界各地で暮らしているのかを見積もる作業に責任を負っています。
この委員会は、関連分野の研究者か専門家と議論し、当該研究文献を参考にした結果、現存のデータを補足して、次のような結論に達しています。
A. 「ホロコースト生存者」の定義
・ ナチ体制のもとにあった国
・ ナチ占領下にあった国
・ ナチ協力者体制のもとにあった国
以上のいずれかで暮らしていたユダヤ人、ならびはこの体制や占領のために逃亡したユダヤ人であれば、この人物をホロコースト生存者と定義する。
編者コメント:[この定義によると、ナチ体制もしくはナチ占領体制のもとで暮らしていたユダヤ人はすべてナチ協力者とみなされてしまうが、それでもなお、「ホロコースト生存者」となる。また1941年のドイツのソ連侵攻以前に、ソ連当局が収容所に送っていたユダヤ人は「ホロコースト生存者」とはみなされない。ソ連政府に殺されたユダヤ人は「ホロコーストの犠牲者」ではなく、単に死亡したというのである。もっともも驚くべきことは、1933年か1934年にヨーロッパを去って、アメリカその他に移住し、ヨーロッパで戦争が荒れ狂っていた時期には、安逸な暮らしをしていたユダヤ人が、「ホロコースト生存者」とみなされていることである。]
B. 現存するホロコースト生存者の数の見積もり
イスラエル: Between |
360,000 - 380,000 |
旧ソ連 |
184,000 - 220,000 |
合衆国 |
140,000 - 160,000 |
西ヨーロッパ |
80,000 - 100,000 |
東ヨーロッパ |
50,000 - 80,000 |
その他の諸国 |
20,000 - 20,000 |
合計 |
834,000 - 960,000 |
この回答が、質問を寄せてくださった人々すべてに対する回答となっていることを願っています。
ご健勝で
アディナ・ミシュコフ
事務助手/AMCHA、イェルサレム