人間石鹸工場の詳細

[『プラヴダ』記者ポレヴォイの本から]

 

Boris Polevoi, The Final Reckoning: Nuremberg Diaries, Moscow: Progress Publishers, 1978 (English Edition), pp. 108-184.

 

 その日、法廷では目をくらますような明るい照明が切られ、あたりは暗闇となった。薄暗い光が瞬く中で、死体が証人席を占領した…

 勇敢なソ連のドキュメンタリー・フィルム製作者(何人かは故人となっている)の芸術作品がこれらの死体を復活させ、法廷に持ち込んだ。まるで、墓場から立ち上がって、被告たちの顔に争う余地のない証拠を突きつけているかのようであった。

 青味がかった光が暗闇の中で瞬き、光の帯が法廷を横切ると、スクリーンには、「ドイツのファシスト侵略者の虐殺についてのドキュメンタリー・フィルム証拠」というテキストが登場した。ソ連邦首席検事が証拠として提出したドキュメンタリー・フィルムである。

 「ダンツィヒ、工学研究所の一室、ここで、人体の産業的利用の方法と技術が考えだされた」とナレーターの声がイアホーンの中でつぶやいた。

 われわれには既知のことであった。法廷にはこの工場の展示証拠と生産品がすでに提出されている。しかし、フィルムはもっとおどろおどろしかった。目を閉じて、法廷から急いで逃げ出そうという気になるかもしれない。だが、この地上の地獄のすべてを経験し、ナチズムの本質を理解し、ナチズムが人類に何をもたらしたのかをしっかりと把握しなくてはならない。

 地下室には死体が山積みされており、それは工場倉庫にある原材料のようであった。実際、死体の山は脂肪の中身で等級を付けられて分類された原材料であった。いくつかの頭部が隅にばらばらに置かれている。頭部は石鹸製造に必要ない原材料であり、ナチの科学をもってしても、それらを産業的に利用する方法が発見できずに、需要に応えることができなかった。大きな桶の中にはばらばらに切断された死体が積み込まれており、アルカリ性の溶液の中でゆでられることになっていた[これが人間石鹸製造工場だ]

 

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