歴史的修正主義研究会

最終修正日:2003104

 

<質問007

 殺人ガス室には、強力な換気装置がついていたので、ガス処刑後すぐに(目撃証言によると520分以内に)ガス室の中に入って、死体除去作業に取りかかることは可能であったのではないでしょうか?

 

<回答>

 たしかに、ホロコースト正史派のサイト(ニツコー)は可能であったと述べています。

 

Q&A30)「…ナチのガス室は、空のコンクリートの部屋であり、強制的に換気されていましたので、空気を入れ替えるには5分もあれば十分でした(Gutman, Anatomy of the Auschwitz Death Camp, 1994, p. 232を参照)。強制換気システムを備えていないガス室もありましたが、そこでは、死体を運び出す人間はガスマスクを装着していました。」

 

Q&A31)「ナチスが最大のガス室で行なった解決は、5分以内で空気を完全に入れ替えることを可能にする換気システムを設置することでした。(Gutman, Anatomy of the Auschwitz Death Camp, 1994, p. 232を参照)。チクロンBをガス室から取り出すための針金網装置もあり、換気プロセスの効果を高めていました。

他のガス室には換気システムは備えつけられていませんでしたので、最初にガス室に入る人々は、ガスが拡散し無害になるまで、ガスマスクを着用していました。」

 

 要するに、換気システムが取りつけられていたので、5分たてば、ガス室に入って死体除去作業に取りかかることは可能であるというのです。

 

論点

@      まず、大前提として、ベルトコンベア式に連続的に「大量ガス処刑」を行なうには、室内に残存するガスを急速に排気すること、すなわち、強力な換気システムが不可欠であるということです。自然換気の場合には、ホロコースト正史派も認めているように、24時間以上も、窓やドアを開放しておくことが必要です。

A      ところが、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所で「殺人ガス処刑」が行なわれたとされる7つの場所(ブロック11の地下室、ブンカー12、中央収容所の焼却棟Tの死体安置室、ビルケナウの焼却棟U、Vの死体安置室1、焼却棟W、Xの「殺人ガス室」)のうち、換気システムが設置されていたのは焼却棟UとVの死体安置室1だけです(中央収容所の焼却棟Tについてはホロコースト正史派のあいだでも意見が分かれています)。上記のホロコースト正史派のサイトの記述は、彼らのいう「殺人ガス室」の大半には換気システムが設置されているかのような印象を与えようとしています。

B      しかも、奇妙なことに、最初から「殺人ガス室」を備えた「絶滅装置」として計画されていたはずの焼却棟WとXの「殺人ガス室」には換気システムは設置されておらず(したがって自然換気)、一方、通常の焼却棟として計画されていた焼却棟UとVの死体安置室1(および死体安置室2)には換気システムが設置されているのです。

C      そして、この焼却棟UとVの換気システムは、排気口=下部、吸気口=上部という配置となっています。これは、汚れた重い空気を下部から排出し、新鮮な空気を上部から取り入れるという死体安置室の正常な機能にまったく対応しています。一方、チクロンBから放出されるシアン化水素ガスは空気よりも軽いために、このガスを放出するためには、排気口=上部、吸気口=下部という配置が適切ですので、焼却棟UとVの死体安置室1の換気システムは、シアン化水素ガスを使った「殺人ガス室」としてはまったく合理的ではありません。

D      さらに、「完全に空気を入れ替える」(「殺人ガス室」ではシアン化水素ガスを完全に排出する)という作業は、たとえば、毎分10㎥の空気を排出する能力を持つ排気装置を使えば、100㎥の部屋ならば、100÷1010分で「完全に空気を入れ替える」ことができるという単純な計算ですむものではありません。詳しい技術的計算は省略しますが、大きな部屋の空気を「完全に入れ替える」には、1時間に70回ほどの空気を入れ替える能力を持つ排気装置が必要なのです。事実、やはりチクロンBを使用した害虫駆除室には、1時間に72回の空気交換能力を持つ排気装置が計画されています。

E      ところが、焼却棟UとVの死体安置室1に設置されていた排気装置は1時間に10回程度の空気交換能力しかもっていません(この能力は、「5分以内に完全に空気を入れ替える」必要のない通常の死体安置室としての使用に対応しています)。さらに奇妙なことに、「5分以内に完全に空気を入れ替える」必要のない死体安置室2(「脱衣室」)の排気能力のほうが、「5分以内に完全に空気を入れ替える」必要のある死体安置室1(「殺人ガス室」)の排気能力よりも高いのです(これも、死体安置室2の容積の方が大きいので、2つの部屋が死体安置室として使用されたと考えれば、ごく自然なのですが)。

F      さらに、チクロンBの丸薬からのガスの放出は、「ガス処刑」終了後も続いていたはずです(チクロンBの丸薬からガスが完全に放出されるには1時間以上もかかります)。つまり、もし、きわめて強力な換気装置を使用して520分で「空気を完全に入れ替えた」としても、依然として部屋に残っているチクロンBの丸薬からはガスが放出され続けているのです。ホロコースト正史派のサイトは「チクロンBをガス室から取り出すための針金網装置もあり、換気プロセスの効果を高めていました」と述べていますが、このような装置の存在を立証している物的証拠、文書資料的証拠はまったく皆無です(詳しくは、ホロコースト再審法廷:チクロンB投下穴、投下筒、針金網柱問題を参照してください)。

 

結論

@      アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所の7つの「殺人ガス処刑」現場のうち、4ないし5つの現場には換気システムは設置されていませんでした。

A      焼却棟UとVの死体安置室1の換気システムは、シアン化水素ガスの排出を行なうには適切な配置ではなく、しかも、520分以内に、「殺人ガス室」から残存ガス(そして放出され続けているガス)を完全に排出する能力を持っていませんでした。

B      それゆえ、目撃証言が述べているように、ガス処刑後520分で、死体除去作業に取りかかることは不可能です。

C      したがって、このような作業が可能であった、このような作業を行なったと述べている目撃証言には信憑性がありません。

 

 

補足

 上記のホロコースト正史派のサイトが、自説の根拠として援用している(Gutman, Anatomy of the Auschwitz Death Camp, 1994, p. 232を参照)は、同書に収録されているプレサック氏とペルト氏の論文「アウシュヴィッツの大量殺戮装置」(本サイトに試訳・抄訳があります)の中の以下の一節です。

 

「吸気(1時間に8000㎥)と排気(同じ強さ)システムが作動し、1520分後には、34分で一回更新される空気は十分にきれいになったので、特別労務班員がまだ熱いガス室にはいることができた。」

 

 この記述は、単純な算術計算にもとづいています。すなわち、焼却棟U、Vの死体安置室1の容積約500㎥)を数字上の換気能力(1時間に8000㎥――この数字でさえも文書資料的根拠がなく、プレサック氏の憶測にすぎませんが――したがって1分間に8000÷60133㎥)で割って(500÷1333.76)、「34分で一回更新される空気は十分にきれいになった」という結論を引き出しているにすぎません。つまり、「ガスを含んだ汚れた空気」と「ガスを含まない新鮮な空気」という別個の集団があって、500㎥の「汚れた空気」を1分間排気すれば、残った「汚れた空気」は500133467㎥となり、これを3回から4回繰り返せば、「汚れた空気」は0となる、すなわちすべて「新鮮な空気」に入れ替わるという計算をしているのです。この計算が室内の空気交換についての技術的無知に由来していることは明らかです。すなわち、換気のよって「ガスを含んだ汚れた空気」と「ガスを含まない新鮮な空気」という別個の集団が存在するようになるのではなく、換気によって「ガスの濃度が低くなった汚れた空気」が存在するようになるだけだからです。ですから、20分間で完全な換気を行なうアメリカの処刑ガス室には、何と数字上の換気能力1分間に2回、すなわち、1時間に120回(死体安置室1のシステムのほぼ10倍)の換気システムが設置されているのです。しかも、死体安置室1の排気口は、空気よりも軽いシアン化水素ガスが集中している上部ではなく、下部に設置されており、さらに、2000名の犠牲者が収容されていたとすると、その排気口の周囲には、犠牲者の死体が積み重なっており、排気能力が極端に低下していたはずです。

 

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