歴史的修正主義研究会
最終修正日:2003年9月21日
<質問005>
ビルケナウ収容所焼却棟Vの死体安置室1(いわゆる「殺人ガス室」)備品目録の中に「シャワーヘッド」および「ガス気密ドア」という項目が記載されていることは、死体安置室1が「殺人ガス室」として使われたことを示す文書資料的証拠ではないでしょうか?
<回答>
まず、問題の文書資料の写真コピーを掲載しておきましょう。ホロコースト正史派のプレサック氏の研究書『アウシュヴィッツ:ガス室の技術と作動』430頁に掲載されており、ホロコースト正史派のサイトにも転載されているものです。
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一番上の列に、タイプでさまざまな備品、たとえば、Laternen(カンテラ)、Klosettbecken(便器)などが記載されています。問題の箇所は、その一番右側の2行です。たしかに、14個の「シャワーヘッド(Brausen)」、1つの「ガス気密ドア(GasdichteTür)」とあります。
そして、プレサック氏は、死体安置室1がシャワー室であるならば、「ガス気密ドア」は必要ないし、たんなる害虫駆除ガス室であるならば、シャワーは必要ない、ゆえに「ガス気密ドア」と「シャワーヘッド」をもつ死体安置室1は「殺人ガス室」でしかありえないという論理を展開し、次のように断定しています。
「[この]資料は、…焼却棟Vの死体安置室1に殺人ガス室が実在した決定的証拠である。」(『技術と作動』430頁)
<問題点>
@ まず、ガス気密ドアが、「殺人ガス室」や害虫駆除ガス室だけに設置されていたという前提が間違っています。アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所のさまざまな建物を検証すればすぐにわかりますが、防災・防空の目的から、多くの建物にガス気密ドア、もしくはガス気密窓が設置されています。とくに、火事や爆発の危険がある焼却棟にはこのことがあてはまります。
A また、焼却棟UやVの死体安置室など、建物の地下室は、空襲時に臨時の防空シェルターの役割も兼ねることができるように、設計段階からガス気密ドアの設置が予定されていました。ガス気密ドアの設置は、戦時中のドイツの各都市の民間の建物の地下施設にも適用されていました。
B さらに、死体安置室には、かならず、死体の洗浄のためのシャワー設備、洗浄室、もしくは洗浄区画が付属していました。このことは、アウシュヴィッツ中央収容所焼却棟Tの死体安置室と洗浄室の配置を見ればすぐにわかります。
C また、プレサック氏は、この備品目録を「14個の[偽(dummy)]シャワー」と英訳していますが、この[偽]という部分はプレサック氏の挿入であり、オリジナル資料の翻訳としては、読者に誤解を与えてしまう、きわめて不誠実かつ非学問的なやり方です。
D プレサック氏は、このシャワーが水道管とはつながっていなかったとか、木製でペンキが塗られていたとか述べていますが、その主張にはまったく文書資料的根拠がなく、「犠牲者を欺くためのシャワー」という「大量ガス処刑」物語の必須アイテムをなんとか発見したいという非学問的な願望の産物のように思われます。
<結論>
@ 焼却棟Vの死体安置室1がガス気密ドアやシャワー設備を備えていたとしても、それは、死体安置室としてごく自然のことです。