歴史的修正主義研究会
最終修正日:2003年9月20日
<質問002>
ドイツ側文書には、「特別措置用の資材」=チクロンBを積載したトラックをアウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所から、チクロンBの供給工場のあったデッサウに派遣する許可電報がありますが、この文書は、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所でチクロンBが殺人目的で使用された文書資料的証拠ではありませんか?
<回答>
問題の文書=許可電報は、SS経済管理本部がアウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所当局に送った1942年8月26日の電報です。ホロコースト正史派のサイトにも引用されていますが、「特別措置用の資材(Material für Sonderbeh[andlung])を積みこむために、トラックをデッサウに急いで派遣する許可がでている」という内容です。
そして、このホロコースト正史派のサイトは、「特別措置は絶滅を意味するナチのコード言語」であるとの前提に立って、アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所に「殺人ガス処刑」のためのチクロンBが搬送されていたと結論づけているわけです。
問題点
@ まずチクロンBは害虫駆除剤として広くかつ大量に使われていたので、チクロンBの使用や存在が、そのまま「殺人ガス処刑」が行なわれたことを意味しているわけではありません。ホロコースト正史派のプレサック氏でさえも、全体の95−98%が害虫駆除用に使用されたことを認めています。もちろん、ホロコースト修正派は100%が害虫駆除用であったと主張していますが。
A アウシュヴィッツ・ビルケナウ収容所へのチクロンBの搬送に関する文書は、この、1942年8月26日の電報だけではありません。収容所当局は、チフスが蔓延していた1942年夏から1942年末もしくは1943年初頭にかけて、5回ないし6回、チクロンBの供給を請求しています。
B たとえば、問題の電報のほぼ1ヶ月前7月22日の電報には「発生した疫病を鎮圧するために、ガス処理による収容所の害虫駆除用の必要資材を搬送するための5トン・トラックをデッサウからアウシュヴィッツに急いで派遣する許可がでている」とあります。その他の電報でも、チクロンBの使用目的は、「殺菌駆除に緊急に必要なガス」、「ユダヤ人再定住用の資材」、「殺菌駆除資材」とあります。
C そして、プレサック氏によると(Jean-Claude Pressac
with Robert-Jan Van Pelt, "The Machinery of Mass Murder at
Auschwitz", p. 215.)、搬送されたチクロンBの量は「ガス処刑用に必要な量の3000%も水増しされた」膨大な量でした。
D ですから、収容所当局がこの膨大な量のチクロンBを蔓延していたチフスの鎮圧に使ったことは明白です。
E ホロコースト正史派のプレサック氏でさえも、民間労働者のあいだでの「特別行動」という文書に解釈について、「この文脈での『特別行動』という用語は、特別なカテゴリーの人々に対するチェックと尋問を意味しており、労働適格者の選別とそれ以外の人々のガス処刑とは関係がない」(Jean-Claude Pressac,
Auschwitz: Technique and Operation of the Gas Chambers, p. 213.)と述べているように、「特別措置」、「特別行動」なる単語が、「絶滅」を意味する「コード言語」、「婉曲語法」であるとするホロコースト正史派の「暗号解読官的方法」はまったく破綻しています。ホロコースト修正派は、「特別行動」、「特別措置」なる用語が、収容所では、疫病の流行を防止するための「衛生・保健措置」と関連していることを実証主義的に明らかにしています。
結論
@ ホロコースト正史派のサイトは、収容所当局がチフスの鎮圧のための大量のチクロンBを請求していた一連の文書資料の中から、自分たちの解釈に都合の良い「特別措置用の資材」という単語が記載されている電報だけを引用するという、学問的に不誠実なやり方を採用しています。
A しかも、「特別措置」=「ガス処刑」=「絶滅」という前提は、ホロコースト正史派の奇怪な「コード言語」説に依拠しているにすぎません。
B ですから、この電報も含む一連の文書は、収容所当局が、チフスの鎮圧に苦慮・苦闘していたことを示しているにすぎません。