第14−18日―1945年10月2日火曜日−6日土曜日
エスター・ヴォールグルートが宣誓のうえ、ボルマンの犬が囚人を襲った事件について証言した。
マルセル・タックマンが宣誓のうえ、油紙の上に大雑把に描かれたビルケナウ収容所の図面を、展示証拠8として提出した。彼は、さまざまな区画、ガス室と焼却棟を含む建物の配置を説明した。
エヴァ・グリカは宣誓のうえ、被告10号(イルゼ・ローテ)による虐待についての、ローゼンツヴァイクとリトヴィンスカの証言を確認した。クランフィールド少佐が反対尋問を行ない、3人の証人の食い違いを指摘した。
調査官ジョン・リッドル、キリル・アルバート・スキャマンス、エドワード・ディンダレ、レオナード・ウィリアム・ヒッグス、ハリー・アイチソンが宣誓のうえ、証人、被告、供述書が本件の証拠の一部とはなっているが、出廷していない人物から供述書をとることについて証言した。
(検事バックハウス大佐による証人サヴィル・マルコルム・スチュワート大尉への尋問)
A:私は、イギリス・ライン軍司令部法務官局司法部の大尉です。ベルゼン収容所で死んだ1875名の死亡証明書について分析します。これらは、ドイツ当局が作成した普通の死亡証明書です。死因、国籍、証明書の日付という3点から分析しました。死因についていえば、22名が老衰、46名が体力の消耗、31名が肺炎、199名が結核、1297名が衰弱、280名がその他の死因でした。死亡証明書にある国籍についていえば、403名がフランス人、349名がオランダ人、264名がハンガリー人、258名がポーランド人、139名が無国籍、113名がベルギー人、70名がイタリア人、29名がアルバニア人、25名がクロアチア人、20名がユーゴスラビア人、15名がイギリス人、190名がその他の国籍でした。1945年5月22日、私は、ディーストの要塞に出かけ、ドイツ語のクラマーに供述書を読み上げました。それは、彼が以前にポラール大尉との尋問で行なったものであり、そのとき、私は通訳でした。彼はこの供述書に署名しました。供述をするようにとか、署名するようにというような圧力が、クラマーに対してかけられたことはまったくありません。
(スチュアート大尉は、ヨーゼフ・クラマーの供述書、展示証拠12を読み上げる。)[1]
ハインツ・マッセト氏、調査官トリップ、調査官ロスチャイルドの供述がバックハウス大佐によって読み上げられる。これらの供述書は、ベルゼン、ノイエンガムメその他の収容所の死亡記録に関するさまざまな文書資料、囚人の親戚の手紙、SSのファイルが引き渡されていることを証言している。
<検事バックハウス大佐>:供述書を提出する段階に入りました。規定8(I)によると、法廷は、供述が軍事法廷以前には証拠としては認められなくても、罪状の立証・反証に役に立つという条件のもとで、それが信頼できるものであれば、採用することができます。私は、できるかぎり証人を召喚するように努力してきましたし、弁護側が誰かの召喚を要請すれば、そのようにしてきました。ベルゼンにいる証人はすべて探しましたが、何人かはすでに国外にいました。
<弁護人フィリップス大尉>:この本に含まれている供述書は、証拠として提出されていますが、私たちは、これらすべての供述書に異議を申し立てます。私たちの見解では、この本の中の証言はまったく信頼できるものではありません。この本に登場する証人の何人かは、すでに当法廷で証言しました。そこから判断すると、残りの証言はまったく価値がないので、受け入れるべきではありません。法廷は、これらを認めることによって、刑事法廷や軍事法廷の正常なやり方から、遠く隔たるべきではありません。
<法務官>:提出される展示証拠はすべて証拠として受け入れるべきであると思います。ただし、受け入れたとしても、全体の状況を考慮して、他の証拠と照らし合わせたのちに、特定の資料にどの程度価値を与えるかどうかは、法廷が決定することです。いくつかの供述書の信憑性がかけているからといって、法廷がその他の80か90にまったく関心を向けるべきではないというのは適切ではないと思います。
(法廷は協議に入る)
<法務官>:弁護側の見解を注意深く考慮するようにと法廷から求められましたが、弁護側の見解を受け入れることはできません。したがって、検事側の提出する供述書を証拠として受け入れることになりますが、特定の供述書にどれだけの価値を置くべきか考慮するにあたっては、弁護側の指摘を考慮すべきであります。
(以下の供述が読み上げられる)
展示証拠番号 ファイル番号
16 1[2] ドラ・アルマレ
17 3 マルガレーテ・ベルク
18/19 4 レギナ・ビアレク(2供述)
20 16 パウル・チェク
21 17 ヤドヴィガ・デムボウスカ
22/23 18 ゲルトルド・ディアメント(2供述)
24 20 カール・ドリンスキ
25 21 メヴロウ・ファニイ・ドゥイゼンド
26 22 ギトラ・ドゥンクレマン
27/28 23 ラチェラ・ブルズトフスカ、ブランカ・ヴァインフェルト、サラ・ヴァインフェルト、サラ・ヴィッツの共同供述
29 25 エティル・アイゼンベルク
30 26 レニイ・エルマン
31 27a ボフミル・グルーマン
32 30 イェケル・グートマン
32 179 シムチャ・ザモスキ
33 31 ヴェーラ・フィッシャー
34 33 ハルマ・フュルステンベルク
35 37 ヴィルヘルム・グルンヴァルト
36 39 スタニスラフ・ハロタ
37/38 42 ヨーゼフ・ハウプトマン(2供述)
39 44 ヘレネ・ヘルコヴィツ
40 45 ヨラン・ホルドスト
41 62 ピョートル・イヴァノフ
42 64 アンナ・ヤクボヴィチ
43 65 アリナ・ヤシンスカ
44 70 アデレーデ・デ・ジョン(2供述)
45 72 ラディスラウス・ユドコヴィチ
46 74 アレグレ・カルデロン
47 75 イヴァン・カロベンニコフ
48 76 ズラタ・カウフマン
49 77 マルガレート・イェリニク
49 78 ニコライ・カレニコフ
50 79 ラチェラ・ケリシェク
51 81 ロルフ・クリンク
52 83,85 アレクサンドル・クロヴィツキ
53 92 クララ・レボヴィツ
54 93 パウル・リヒテンシュタイン
55 93a アドルフ・リンツ
56 94 ヒラ・リップマン
57 98 ヒルダ・レーフラー
58 99 イレーネ・レーフラー
59 101 イサク・ロゾフスキ
60 102 イルカ・マラチョフスカ
61 103,104 ペテル・レオナルド・マカル
62 107 アダム・マルチンコフスキ
63 108 マックス・マルコヴィチ
64 109 シャヤ・ミューラー
65 110 リヒャルド・ナトルスキ
66 111,113,114 カテリーネ・ナイガー
67 115 マリア・ノイマン
68 116 アンドレグ・ニェクラソフ
69 117 ワンダ・オイレイシュカ
70 118 レギナ・プリュセル
71 119 シュムル・ラシナー
72 120 ルバ・ロルマン
73 121 ハンカ・ローゼンベルク
74 125 レギナ・ローゼンタール
75 127 ニコライ・シェクラコフ
76 130 エルガ・シースル
77 131 サラ・シーフェルマン
78 133 セサ・ジルベルベルク
79 134 ドラ・ジルベルベルク
80 136 ヨセフィネ・ジンガー
81 137 アレクサンドラ・シヴィドヴァ
82 146 トラ・シュテムプラー
83 147 メヴロウフ・ネティ・シュトッペルマン
84 148 エヴァ・クリスティナ・ストヨフスカ
85 151 ヴラヂミール・スリマ
86 159 エリカ・トゥナ
87 160 エディト・トリーガー
88 162,163,164,165 ルバ・トリシンスカ
89 167 エステラ・ヴァイスブルム
90 169 ソニア・ヴァティニク
91 170,171 マルギト・ヴァイス
92 172,173 ミリアム・ヴァイス
93 175 ツデネク・ヴァイスナー
94 177 ミリアム・ヴィンター
95 181 ベネク・ツッケルマン
9 185 ヴァツラフ・イェツニイ
96 190 マルガレート・イェリニク
96 191 ミチャル・プロムスキイ
97 223 フィロ・ピンクス
98 227 ミチャル・ビアルキエヴィチ
99 228 ヨーゼフ・ドイッチュ
100 229 パヴェル・ブルガー
101 230 エンゲル・ザンドル
102 231 エリザベート・ヘルプシュト
103 232 レギナ・ボレンシュタイン
104 233 ロザリア・シュパラガ
104 234 チェスラヴァ・スリムコヴィアク
104 235 マリア・シノフスカ
105 239 アルノスト・バシュ
106 245 ソフィア・ローゼンツヴァイク
107 257 エルンスト・ポップナー
109 236 セヴェク・コブリナー
110 46 ヘレナ・コッパー
111 192 ヘルタ・エーレルト
112 194,196,197 イルマ・グレーゼ
113 198 フランス・ヘスラー
114 201 フリッツ・クライン
115 220 ヒルデガルデ・ローバウアー
116 221 エリザベート・フォルケンラート
117 226 アントニ・アウルジーグ
118 227 ヨーゼフ・クラマー(追加供述)
(供述書が読み上げられているときに、弁護側が異議を申したてる。法廷は協議し、法務官の提案を考慮したのちに、異議申し立てを認めるかどうかについてのルールを定めた。供述書が掲載されている付録では、弁護側が異議を申し立て、法廷がそれを認めた供述の部分は削除されている。特定の被告に言及しておらず、すでにわかっている収容所についての情報をそれ以上詳しく述べていないような供述も削除された。)
<検事バックハウス大佐>:以上で、検事側の立証を終わります。