<質問04>
「ホロコースト」とか「ショア」とは何を意味しているのですか?
<回答>
「ホロコースト」(焼かれた供物の犠牲を意味するギリシア語の単語)および「ショア」(「破局」を意味するヘブライ語の単語)は、暴力による特定の人間集団のほぼ全面的な絶滅を意味しています。ここで、問題となっているのは、第三帝国の支配した地域で暮らしていたユダヤ人のことです。市民権の剥奪、移送、強制労働をともなった収容はこれまでにも行なわれてきましたし、今日でも行なわれています。このような事態は、人間集団の物理的絶滅に帰結したわけではありませんので、「ホロコースト」や「ショア」に入れるべきではありません。一般の人々は、第三帝国時代にユダヤ人から市民的諸権利を剥奪したこともホロコーストの一部である、と考えています。しかし、そうだとすると、南アフリカでは、20世紀末まで、黒人は諸権利を剥奪されていました。イスラエルとその占領地ではパレスチナ人が諸権利を剥奪されています。合衆国では、20世紀中頃まで黒人とインディアンが諸権利を剥奪されていました。こうしたことまでが、ホロコーストの一部となってしまうでしょう。
ユダヤ人に対するホロコーストに関する共通の歴史的イメージは、以下の諸点にまとめられます。
1.
民族社会主義者政府はユダヤ人を物理的に絶滅する意図をもっていた。
2.
民族社会主義者政府はユダヤ人を物理的に絶滅する実際の計画を持っていた。
3.
この計画を実行する政府機関と予算が存在した。
4.
この目標を達成する技術的に洗練された大量殺戮手段が存在し、ロシア戦線の後方地帯では殺人ガス室や大量銃殺が大きな役割を果たした。
5.
数百万の死体を処理する技術が存在した。すなわち、十分な処理能力と燃料を持つ焼却棟や焼却壕が存在した。
このような大量殺戮事件は、すみやかに稼動するガス室の中で殺戮が行なわれ、それに隣接する焼却棟の中で死体が処理された、すなわち、巧みに計画され、効率的に機能する殺人生産工程にのっとって進められ、それは、人類の歴史の中で「前代未聞な」ことというように描かれています。ホロコーストとこれまでの虐殺事件との相違はここにあるというのです。