<質問02>
歴史的修正主義はなぜ重要なのですか?
<回答>
私たちの歴史観は、他の学術分野の概念と同様に、批判的な考察に依拠しています。これは、新しい証拠が発見されたときには、とくにそうなのです。私たちは歴史学上の諸説をたえず再検証しなくてはなりませんが、次のような場合にはとくにそうなのです。
1. きわめて昔に起った出来事を扱っているとき。この場合、私たちの説の根拠となる証拠がきわめて少ないという問題が生じます。
2. ごく最近に起った出来事を扱っているとき。この場合、これらの出来事に由来する政治的影響に対処しなくてはならないという問題が生じます。
昔の出来事を扱っているときには、ちょっとした新しい証拠であっても、私たちの見解を根本的に変えてしまうことがありえます。たとえば、今日、歴史家たちは、ヨーロッパ人がアメリカを発見したのは5世紀前のことであるという伝統的な説を見直しています。最近の考古学的調査は、ヴァイキングがアメリカに到達したのは10世紀のことであったという事実だけではなく、ヨーロッパ人的な特徴をもつ人間が1000年前にアメリカ大陸で生活していたことを明らかにしています。(このテーマについてはJohn Nugentの論文"Who were
the real indigenous peoples of America?"を参照してください。英語でonline版を作成中です)。
最近の出来事については、「勝利者が戦争の歴史を書く」という格言が依然として通用しています。しかも、勝利者は客観的たりえません。勝者の歴史の修正が可能となるのは普通、勝者と敗者の対立がなくなってからのことです。この対立が数世紀続くこともあります。歴史研究が金銭を生み出すことはほとんどありませんので、ほとんどすべての歴史研究機関は政府から金銭的な支援を受けています。自由で自立的な歴史研究機関は事実上存在しません。ですから、各国の政府が大きな政治的利害関係を持っている現代史の分野では、公認の正史には懐疑的な姿勢をとらなくてはなりません。「金を払っているものが支配する」という格言もあります。だからこそ、歴史的修正主義が重要であり、各国の支配者は歴史的修正主義を抑圧しているのです。